本人が保険料を納めていたのに社会保険庁に記録が残っていない「消えた年金」問題と、厚生年金の記録改ざん問題について、一定の要件を満たせば、証拠や証言がなくても記録を訂正するという。
年金記録問題は、ずさんな管理をしていた社会保険庁側に非がある。なのに、記録回復のための立証を被害者の側に負わせてきたやり方には無理がある。時間もかかりすぎる。救済を急ぐには、基準の緩和は当然である。
とはいっても、危険すぎる。
新基準では、保険料を納め忘れた人も救済の対象となる。保険料をきちんと納めた人との公平性を保つために、なりすまし(うその申し立て)をチェックし、不正な受給に歯止めをかける仕組みが欠かせない。
年金記録の訂正や回復を認めるかどうかは、総務省の第三者委員会が審査している。保険料を納めた領収書などの証拠や、関係者の証言が必要とされる。
十数年以上も前の領収書や通帳を保管している人は決して多くない。申し立てた人のうち、救済が認められたのは4割にとどまる。
新たな救済案は、国民年金の保険料納付記録の空白期間が1回で2年以内ついう条件を満たしていれば、第三者委の審査を省いて記録を訂正する。
厚生年金では、事業主や社保庁職員によって保険料算定の基礎となる標準報酬月額が改ざんされた疑いが濃いケースのうち、従業員の場合は証拠確認などの手続きを省略する。
新基準によって、救済の対象は広がり、手続きも簡略になる。だが、課題はなお残る。
新基準に当てはまる人は、実際はこれまでも第三者委でほぼ全員が救済されてきた。問題は、新基準からはじかれる人たちだ。空白期間が長く証拠や証言もないといったケースをどう救済していくのか、悩ましい。
年金記録を調査し結果が出るまで1年、その後第三者委員会へ申し立てをし結果が出るまで半年、さらに年金記録を訂正してから未払い分が支給されるまでには1年以上かかる。
現在のところ、記録を回復し入金まで2〜3年かかるのが一般的だ。
来年1月の年金機構発足に伴う混乱は避けられないであろう。
長妻厚労相には、引き続き記録問題に取り組むとともに、制度改革の見取り図を描く責任がある。着実に進めていくほかない。
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